伝説のスピーカーケーブルをもう一つ

ウェスタン・エレクトリック WE16GA。

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これを手に入れるのはなかなか大変でした。

私がウェスタン・エレクトリックにこだわるのには理由があります。
ベルデンも素晴らしいケーブルなのですが、それ以上に癖が無く、究極のフラットと言えるほどの音質だからです。実際WE16GAは、良い音悪い音という表現を超えた音源に忠実な音を聞かせるケーブルです。

私の視聴環境では、スピーカーとアンプの距離は、ケーブルを壁に沿って這わせると5mほどになります。

ベルデンの8473とWE16GAを交互に使っておりましたが、8473に比べると、WE16GAの方が高域に若干(本当に若干ですが)きつさがあり、低域にやや物足りなさを感じます。それもそのはず、8473は5mで使うのにジャストフィットの太さ14AWG。それより1段階細い、3~4mがジャストフィットと言われる太さなので、5mで使うには少々無理があったのでした。プロ用ケーブルというのは非常に長さに敏感な代物でして。

先日、クローゼットを覗いたら、いつ頃購入したのであろうWE14GAが出て来ました。

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8473と同じ太さでしかも長さ5m弱。それも4本。
ずっと眠っていたとは勿体無い。これを使わない手はありません。

市場に存在するウェスタン・エレクトリックのスピーカーケーブルは、少なくとも50年以上前に製造されたものと思われます。メーカーそのものも既に消滅し、製造も全くされておらず、世界にどのくらいの在庫があるのかは不明です。特にこのWE14GAは、本国アメリカの在庫は元より、世界中の市場在庫も尽き果てたようで、どこにも売っておりません。オークションに出品されることも少ない、ヴィンテージもヴィンテージなスピーカーケーブルです。

ウェスタン・エレクトリックのケーブルに共通する特徴は、ビニールの被覆の更にその周りが美しい綿布で覆われているという二重構造にあります。綿は帯磁しないということから敢えて使われているそうです。非常に手が込んでいます。構造はシンプルでも、つぼを押さえた作りで的確な音を出す。そこがプロ用の凄いところです。また、2本の線が適度なピッチで撚ってありますが、これはノイズを拾うことを適正に避けるためだそうです。

一段階太いと言っても、オーディオメーカーが造る大蛇のようなケーブルとは比べようも無いほど細いものです。まともな音を出すには、寧ろ細くないとダメなのです。必要以上に太いスピーカーケーブルでは、まともな音を出すのは不可能です。

それではケーブルを結線。

パワーアンプ側は、例のY型ラグを装着。

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パワーアンプの出力端子にネジ止めします。

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スピーカー側は芯線抜き出しのまま結線します。

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2台のCrown D-45に接続したものの、1台が不調になったためシングルワイヤリングでの接続を余儀なくされました。ジャンパーケーブルとして、10cmほどに切ったWE16GAを使いました。

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愛聴曲をいくつか聞きましたが、WE16GAに比べて高域のきつさが気になりません。
背景雑音の少なさ、音場の見通しの良さや立体感、楽器の位置の正確さやヴォーカルの定位の良さ、音のシャープさなどはそのままに、重心が少し下がった感じがします。部屋の雰囲気が変わりました。

低音の出方をチェックするのに、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン」を使います。
このオルガンの重低音を再生するにはかなりしんどいものがあります。我が家の古ぼけた洋間で、近隣の迷惑を気にしながらの音量ではなかなか聞き取れません。このケーブルは、オルガンの低音が前より聞こえる・・・
重低音には程遠いですが、その片鱗を垣間見ることができました。部屋の状況を考えると大健闘と言えるでしょう。

クラシックのコントラバスやジャズ・ポピュラーなどのベースの低音はよりストレス無く出るようになりましたが、ダンピングの効いた、膨らみ過ぎず引き締まったダイナミックな低音です。ヴァイオリンなどの弦楽器では、高音は倍音成分タップリでまろやかになり、やや耳に付いていた金管楽器の鋭さも和らぎました。と言ってもシャープさは失われていません。尚且つ音にコクがあります。これはいい感じ。

協奏曲では、独奏楽器の存在感が凄いの一言に尽きます。
ステージの一番前で演奏しているのがハッキリわかります。強奏するオーケストラに掻き消されることもありません。

ヴォーカル物は、2本のスピーカー間の真ん中に声がピンポイントでポッと浮かび上がる感じです。サ行も耳に付かずいかにも人の声らしく聞こえます。

前より音がこちらに向かって来るような感じになりました。迫力がありますが、とても自然な耳当たりの良い音なので、音量を上げてもうるささを感じません。これが落とし穴で、ついつい音量を上げてしまいそうです。要注意ですな。

一つ発見がありました。
スピーカーの後ろ側にほとんど音が回り込みません。スピーカー自体の性能も一役買っているかもしれませんが、それだけロスが無く、前面に確実に音が放射されているようです。音離れが良いと感じたのはそのためかもしれません。

5mほどで使うにはどうやらWE14GAがベストマッチのようです。これで音楽をより楽しむことができそうです。初めからこれを使っていればよかったな。

世の中には物凄いものがあるもんだと思いました。


オーディオシステムの実力を評価する簡単な方法があります。

ヴォーカル物(歌)を何か1曲聞いてみて下さい。

●歌声が、2本のスピーカー間の真ん中にしっかり定位するでしょうか?

●その歌声が、いかにも人の声らしく聞こえるでしょうか?

以上の2点をチェックしてみて下さい。

人の声は普段から聞き慣れているので、違和感があればすぐにわかるはずです。人の声がそれらしく再現できれば、楽器やその他の音もそれらしく再現できるというわけです。

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